診断&提案 事例

実際に相談頂いた事例の紹介です。

(1)不動産の価値を知るのは、「売るため」だけではない

『守る』ために『診断』する。

弊社による診断は、すでに計画図や提案書をお持ちの方の「セカンドオピニオン」的役割にもなります。

計画を進める前に、まず土地の市場価値について診断し、その潜在価値と潜在リスクを把握すること。

判断を下す前に、適切な判断材料が必要であることは言うまでもありません。

「代々受け継いできた土地を自分の代で手放すわけには…」

このような方こそ、いまある不動産資産についての診断が必要であると言えます。

コア・リサーチの不動産診断は、売ることだけを前提とせず、「土地の資産価値を見極めること」。

見極めたうえで、資産価値を高める戦略を練る。これがひいては「守りを堅くすること」に繋がります。

以下で紹介する事例は、そんな「不動産資産を守りたい」相談者へのコア・リサーチのソリューション例です。

賃貸住宅・アパート経営

【相談事例1:Aさん(東京都下)】

都内に土地をお持ちで、自宅だけでは大きすぎる土地であったため、「賃貸併用住宅を考えたい」。

一般的に「不動産の有効活用」と言われ、多くの地主の方々で使われている手法です。

「節税」「減税」をキーワードに、「借金」をして賃貸(併用)住宅を建てる手法は一つの考え方と言えます。

しかしながら多くの場合、建築側の提案書について吟味・検証される方が少ないように思われてなりません。

【Aさんの状況】

Aさんは、すでにあるメーカーから賃貸併用住宅プランと資金・収益計画書を手元にお持ちでした。(契約直前)

フルローンで、1階の賃貸住宅部分による収益でローンの一部をまかなうという、ごく一般的な計画。

収益計算は30年間一定の提案書で、「損はしなそうだ」というお考えを漠然とお持ちでした。

このケースとは逆に、すでに建てた方で、収益計画との乖離(赤字経営)が大きくなってから「何かできないか」とご相談を頂くケースも(実は数多く)あるのですが、原因の一端はやはり建てる前の検証・根拠不足にあるのではないでしょうか。

気を付けなければいけないのは、「守る」はずが、相続を経るごとに「損失」してしまう潜在リスクについて。

アパートを建てることで、

①相続時の評価は下げられる。(土地を守れた、節税になった)

②安定収益を確保できる。(計画書ベース)

という提案側からの一方的な内容。

上記の①②に対して客観的な目線から合理性を確かめ、潜在リスクを見極め、判断材料を収集することにしました。

【コア・リサーチからの検証提案】

①相続の為の評価は下げられるが、市場における価値(例えば売却する場合の価格)まで下げていないか検証する。

②近隣のマーケットを綿密に調査・把握し、中長期的目線で現実的な空室リスク等を熟慮した収益計画か検証する。

③建築費について、収益性に対して建物の質や賃料を落とすことなく建築費をセーブできるか検証する。

④たとえば、空室が50%となっても、キャッシュフローや相続時に問題は生じないか。その時の対応策はあるか検証する。

⑤もしものときに備え、すぐに現金化できる、評価の高い不動産資産は準備されているか検証する。

耳に痛い部分ですが、しっかり検証しておくことは、今後、より重要度が増してくることでしょう。

ここを疎かにすると、守るはずが、結果守れなくなる事態が生じることもあるのです。

【検証結果報告】

①市場における価値が低い(市場より面積が大きい土地で、賃貸併用住宅では買手が限定され、価格が低い)。

②駅からの距離(10分)、在庫数、賃貸価格変動状況からリスクが大きく、賃貸面積等に再検討の余地あり。

③品質、賃料を落とすことなく、まだ建築費を圧縮できる余地(または依頼先、または建築物の構造等)がある。

④キャッシュフローに問題が生じたときのリカバリーが出来ない(全体売却しか現金化の方法が無い)。

⑤もしものときには、全体売却することでしか現金化の方法が無い。

この内容をお知らせしたとき、Aさんは「こんなにリスクがあるの?」と驚いていました。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。

一つに、「メーカーや建築会社の人間は不動産のプロではない」というのが原因としてあると思われます。

弊社コア・リサーチスタッフは「元建設会社出身」に加え「相続不動産取引経験多数」という少々特殊な下地があり、

通常より踏み込んだ検証とアイデア(提案)を提供することができています。

Aさんの考えは

「次世代に益となるものを残したい(相続税対策・節税)」

「収益が得られる計画を持ちたい(経済面の安定)」

というもの。

その両方のニーズを満たす手法(有効活用の方法)は一つだけ、ということはありません。

【弊社提案とAさんの判断】

比較検討図

事例1

①市場価値を高く維持しつつ自宅と収益構造を提案(上図右側)。

・少々大きい土地を将来2分割(流通適正面積)して片側売却が可能な下地を作っておく。

・一方に自宅を、もう一方に「賃貸戸建て住宅」を建てる。

②マーケットに対し、競争力・安定力の高い収益計画を提案。

・ファミリー向け賃料が増加傾向な市場、かつ競合が少なく競争力・安定力が高いと推測できる。

③弊社マイホームプロジェクトで「良品質の住宅をローコストで」建てることが出来る手法を応用提案。

・建築費を抑えて賃料が高く確保出来るため、収益率が高い。

④⑤相続時や、もしもの時には、切り離して売却が可能な準備を提案。

・賃貸住宅部分もAさんの住宅部分も、良質な中古戸建住宅として市場において高い資産価値を有する。

有効に活用してこその、「有効活用」です。

診断なくして、手軽で有効な戦略など、ほとんどないと弊社では考えています。

(2)納税のために遺しておいた不動産の価値

調査・診断においては、「見た目に惑わされないこと」も重要です。

どういうことかと言えば、「現在アパートや自宅や倉庫が建っている、駐車場になっている」等の状況のことです。

それらの建物や使用方法等に縛られず、まずは「土地そのもの」の価値について知ること。

準備してあります

【相談事例2:Kさん(東京都23区)】

先代が残してくれていた、駐車場。こちらを相続納税資金用に急ぎ売却を考えている。

知人の不動産業者が言うには、7000万円以上で売れるのではないか。

相談の目的は、「オークションで高く売却して欲しい」というもの。

土地を残されている場合で怖いのは、

・市場の取引坪単価を土地の規模を考慮せずにそのまま適用している(○○坪×■■万円)。

・検証もせず、根拠がなくとも「プロ」が言った価格を鵜呑みにしている。

という、客観性・合理性を欠く判断・期待の存在です。

弊社は、売主様の耳に良いことばかりを言いません。

むしろ、耳に痛いことを多く言っているかもしれません。

だから、売主様から8,000万円で売りたい、売れるはずだと言われても

「その金額で売却の情報公開をしましょう」とは言いません。

まず、「診断」です。

どんなに急いでいても、いや、急いでいるからこそ、しっかりと診断し、客観的・合理的に戦略を講じなければならないのです。

相続の場合、納税期限があります。しかしながら、慌てて売ることは避けなければなりません。

しっかりと、スケジューリングすること(戦略)が出来れば良いのです。

そのうえで、どうすれば高値売却の実現が可能か、戦略を練るべきです。

【診断による現状把握】

・駐車場、土地40坪

・・・市場流通適正面積(20~30坪)に対して、大きすぎる。

・相場と坪単価

・・・取引事例による市場流通単価は適正面積より18~20%減額される。

・土地の境界が不明確

・隣地からの越境物の存在

・道路セットバックあり

・・・確定測量にすぐとりかかる必要あり(2~3ヶ月見込み、実費負担)。

いい住宅地に存する個人の住宅用地として、客観的に見れば惜しいという弊社の感想。

1宅地では大きすぎる土地。このエリアでは、この土地を1宅地として購入し、家を建てるとなると総額が1億円を超えてしまう計画になってしまうこと。

その予算になると、より魅力的なエリアでの計画が可能な予算になり、競争力は落ちてしまう。

つまり、買手の数もかなり限られてくる(少なくなる)ことは明確。

(3)土地の面積と市場の関係性

土地の価格を決めるのは、マーケット(市場)である。

マーケット価格には「価格」と共に、「適正な規模(土地の面積)」が含まれていることを忘れてはなりません。

この事例もそうですが、一般個人向けの流通価格と規模に比べ、面積が比較的大きいという場合などは、

実現性の高い買手として、「法人(建売会社)」への売却価格を並行して押さえておくことが肝要です。

3階建ての建てられるエリアになると、一般個人に売却できる価格に近い価格まで迫ることもあります。

(※注意点:最低敷地面積の制限や地区計画がある場合)

【売却戦略】

提案図

図2

①スケジュールの落とし込み(売却完了期限:4か月後)。

・納税期限までに、高値を追求しつつ確実に売却可能な2段階スケジュールを計画、共有。

②一般個人向け情報提供期間の設定(第1段階:2カ月間、高く売れる可能性を追求)。

・適正相場ゾーン:6,500万円~6,800万円

③プロ向け高値売却の準備(第2段階:2カ月で買手が現れない場合のリカバリー、更に2カ月以内見込み)。

・適正相場ゾーン:5,500万円~5,800万円

Kさんには、弊社の診断内容とこの戦略提案をお伝えし、ご納得のうえで実行の了承を頂きました。

【結果】

2カ月間では、一般個人客からの購入申し込みは得られず、第2段階の弊社の不動産オークションを実施。

上記③の相場高値5,800万円を大きく上回る、6,150万円で落札されました。

ほぼ一般個人客の価格相場ゾーンに近づく、驚きの高値売却を実現でき、Kさんにも喜んで頂けました。

しかしながら、もし、最低敷地面積などの規制があって、「2宅地に分割できない」土地であったら、

上記③の戦略が取れなくなるところでした。

「あと1㎡あれば~」、「あと1m間口があれば~」は、決して極端な話ではありません。

土地を残す場合にも、しっかりと診断をもとに戦略を練ることが肝要であると再確認しました。

何度も言います。診断なくして戦略なし

(4)それでも分筆すべきか

相続を「争続」にせず、円満に遺産分割協議がまとまれば、それが最良であることは、誰もが認識するところであります。

残念ながら、それでも意見・主張の対立が避けられない状況というのは大小問わず生まれえます。

そんなとき、「客観的」「第三者的」な立場に立つ相談者は重要な役割を占めることになります。

その第1人者が、税理士でしょう。

全ての相続人に対して、中立公平な立場から資産評価をし、全員が納得のいく結果に向けて采配を振るう立場。

実は、弊社のスタンスも、かなりそれ(税理士)に近い立場にあります。

(相続案件を数多く手がける税理士さんからの依頼で、不動産分野のみお手伝いすることが多いので)

(因みに、相続の経験豊富な知識も実績もある税理士の先生をご紹介させて頂くことも多いです)

すでに意見が対立してしまっている相談者からの依頼でも、弊社のスタンスは変わりません。

◆客観的な不動産資産の全体把握

◆合理的な不動産アレンジ(資産価値向上)提案

◆中立公平な高値売却 (オークションン売却も活用)

について、尽力することだけです。

分筆したい

【相談事例3:Sさん(東京都23区)】

大きな自宅の土地を兄弟3名で相続することになり、共有するのではなく、各自分筆して個別所有を希望。

将来のもめる要素をなくしておきい、という二男の主張から。

不動産資産を売却せずに相続する場合、分筆線の決定には慎重な判断が必要です。

不動産の面積が大きいから、ただ面積を3等分すればいいわけではありませんから。

このときこそ現況をしっかり診断し、吟味しなければなりません。

いくつか注意点の例を挙げれば、

・土地形状について

・道路間口について

・各人の使用目的について(自宅か、活用か、売却か)

・マーケットの流通適正規模とその価格(売買・賃貸)について

・そもそも分筆すべきか

という視点が重要です。

【診断による現状把握】

・駐車場、土地204㎡

・・・市場流通適正面積(70~100㎡)。このままでは大きい。

・形状は綺麗な長方形、前面道路間口が約22m

・・・3分割時の間口約7m強は市場適正価格に値する。

・土地の境界が不明確

・・・分筆するには、土地家屋調査士による確定測量作業が必要。

パッと見、3等分したくなる土地で、分筆してしまえば解決!に思われました。

検討図

図3

と こ ろ が !

この地域には、「1宅地の最低敷地面積70㎡」という規制が存在していたのです。

これは、つまり3人で68㎡ずつ分筆して所有した場合、

・自宅として使用するにも家が建てられない

・他人に住宅用地として売却が出来ない(どの土地も家が建てられない!)

いわば、各自「駐車場」または「物置」用途でしか方法のない土地になってしまうのです。

不動産の資産価値どころではありません。

そもそも、分筆してしまっていたら、資産価値が極端に言えばゼロに近い状態になるところでした。

【結果】

Sさん含む相続人3名に診断結果をお伝えしたところ、「現金化して分配」という話でまとまりました。

売却には弊社の不動産オークションを活用させて頂き、市場高値を追求させて頂くこととなりました。

【後述】

1点残念であったのは、隣地と交渉して、約6㎡(間口70cm)を売って貰えなかったこと。

売って貰えていれば、3宅地分割が可能になり、更なる高値に出来ていましたが……。

<その他、分筆がらみの提案事例(箇条)>

・土地の全体を診断、分割取得する全員に「高く売れやすい分筆線」を提案。

・公的評価(路線価・公示地価)に惑わされない、合理的な土地評価によって「本当に売るべき土地」を提案。

・将来売却地の戦略を考慮した、「アパート建築位置」の割り出し提案。

『守りたい』方にこそ、コア・リサーチの『診断』が役に立つはずです。